代表からのメッセージ

代表からのメッセージ

カウンセラーになったきっかけ

私がカウンセラーになろうとしたきっかけを少しお伝えしたいと思います。 私が学校を卒業してある出版社に就職し、10年ほど経ったときの話です。 日々小さなストレスはありましたが、良い同僚、上司に恵まれ、それなりにお給料もいただいていました。 10年も同じ会社で働いていれば、ある程度自分の居場所もつかめてきます。居心地という意味ではとても満足していました。

ただ、定年までこの会社で仕事を続けている自分がどうしても見えず、かと言って他に人生の目的も見つからず・・・ 言うならば、「行き詰まり」のようなものを感じていました。 そんな時期、私の部署でインフルエンザが流行して自分も感染してしまいました。 2日ほどで熱は下がったのですが、5日間の出勤停止。 久しぶりに訪れたゆったりとした時間に新聞を読んでいてふと見つけた記事。 それが「ボランティア電話相談員募集」の記事でした。

「あ、やってみたい!」私はすぐに問い合わせの電話をしていました。 「あの、新聞を見たんですけど・・・私、心理学の勉強や職業経験はないのですが、応募してもいいですか?」 「ぜんぜん大丈夫ですよ。応募締切日だけ注意してくださいね」 何かすごい熱量が自分を押していました。私はその日のうちに原稿用紙10枚の課題作文を書き上げ、応募動機を書き、出勤停止時期が過ぎると文房具屋に走り、提出用A4封筒と切手を購入し、作文をポストに投函しました。 ここから始まった、研修期間も含めて4年間の電話相談員の経験が今の私の原点です。

相談員の研修

相談員の研修では、こんなことがありました。 8名グループが輪になって座り、ファシリテーターが2名入りました。 「今から時間は90分です」ファシリテーターの方はそう告げた後、何も話しません。

「何?今から何をするの?話すことを指定してくれないの?」皆きょとんとしています。 沈黙が10分ほど続いたでしょうか。たまりかねたのか、1人の方が話し出しました。 「あのー、今、私、悩んでいることがあるんですがね」 「それはどんなことですか?」他の方が聞きます。するとそこにファシリテーターから厳しい調子でこんな言葉が返ってきました。 「どんなことかを知りたいのね。どうしてそう思ったの?それを知ってあなたはどうしたいの?」 「知ったら具体的なアドバイスができるかと思いまして・・・」 「知ったら具体的にできると思うんですか?そう考えるあなたの気持ちは?」 「わ、私の気持ち・・・ですか?」 とにかく、事象に焦点をあてるのではなく、ひたすら『今、ここにある気持ち』に焦点をあてるセッションでした。

2日間で6セッション。詳細は守秘義務の関係で記載できないのですが、本当に心身ともに厳しい研修でした。 輪の中心に置いてあったボックスティッシュの意味は1セッション終わっただけでわかりました。 毎セッション、数人が泣いていました。もちろん私もそのうちの1人でした。 研修が終わって、全体での振り返りの時間。 とても長く感じた2日間を自分の中で反芻してみました。 「この研修に何の意味があったかわからない!」研修が終わっても、そう心の中で叫んでいる私がいました。 でも、それと同時にすべて、「私の、気持ち」で振り返りをしている自分がいました。

何の意味があるのかわからない、「怒り」を持った自分がいた。 つらい過去を話す羽目になり、「悲しみ」を持った自分がいた。 つらかったよね、って言ってもらえて「すごく嬉しかった」自分がいた。 そんな風に自分の「気持ち」だけを忠実に振り返ることができていたんです。 そして、そういう気持ちすべてを認めてあげていいんだ、それが私だから、ということに気付いたのです。 振り返りの時間にその気持ちを話しました。すると、ファシリテーターの方がはじめて優しく言ってくれました。 「そう、それが『気付き』なんですよ」 私が実体験で得た『気付き』でした。

心に寄り添う伴走者

あの研修の意味を本当に理解することができたのは、それから何ヶ月か経ち、実際に相談員として電話を取り始めてからです。 話し手と聴き手は、一面識もありません。そこから関係を作っていく。 関係を作る過程で、話し手の中に『気付き』が生まれる・・・ あの研修は「何もないところから何かを生み出す」という『気付き』の極意を学ぶ体験だったのです。

あなたと私はカウンセラーとクライエントとして出会うまでは、何もない関係です。 でも、何もない関係から何かを生み出す過程で、人は『気付き』を得て、そこから自分の力で歩きだすことができる。 そういう私も、まだまだつまづいたり、転んだりしています。 相談員のときも、電話をかけてこられる方々から多くの『気付き』をいただいていたし、これからもそうだと思います。 ですので、カウンセラーとクライエントの間に上下関係はないと考えています。
心に寄り添う伴走者であること。それがカウンセラーとしての私の理念です。